11.17.2011

石巻で聞いた話。

こないだ石巻に行ったときに、「石巻市復興を考える市民の会」の藤田さんという方に聞いた話。

マスコミ(特にNHK)の報道に対する不満と、
被災者の自分の行動が他の被災者に与える影響をお話された。

以下にメモと記憶を頼りに書く。

数か月前、仮設住宅内で自治会が立ち上がった、ていうニュースが放送されて、
いかにも希望に満ちている感じの報道があった(たぶん今もある)。
その報道はNHKによるものだったらしい。

だけど、藤田さんによると、そういう進んだコミュニティは一部だけで、
残りは全く近所のつながりもないような状況みたい。
そういうNHKの報道は迷惑だと、大きな声で切実に叫んでいた。
実態を全て報道してくれと。

同様のことは水産の報道でもあったらしい。

漁業が盛んな石巻で、震災後に復興が進んで水揚げが始まった、という報道に関して。

藤田さんが言うには、それがどうしたと。
復興がまだまだなのに、進んでる感のある報道はやめてほしい。
ほんの一部にすぎない。
復興しつつある報道をするんなら、その他の圧倒的大部分は全然進んでいない、
というニュースも合わせて報道するべきだ、と。

マスコミは、取材で藤田さんの所に来るとき、ある前提をもっているそうだ。
視聴者はTVで惨事ばかり目にして、鬱になっている。
だから復興が進んでいるというニュースをとりたい、という前提で。

その話を聞いて、残念に思った。復興の報道を疑うようにしようと思った。
この報道の姿勢は全くの本末転倒じゃないか。
間違った報道とまでいかなくても、間違った印象を視聴者に与えてるんだから。

それに、視聴者は、TVとかの報道を避けることができるけど、
被災者は被害から避けることはできない。


藤田さんは、マスコミのその出来レースに嫌気がさして、
今では取材は一切受けていないって言ってた。
当然だと思う。公共放送をうたい文句にするNHKがそれじゃどうしようもないな。
(NHKの言うところの公平性とか中立性は、俺はもともと嫌いだけど。


藤田さんのお話されたトピックはもう一つあって、
支援活動をすることで他の被災者たちに与えるポジティブな影響について語っていた。

藤田さんによると、被災地では自殺者が増えているそうだ。
家に住めなくなって、地元を離れざるを得ない人が多かったり、
どんなになっても地元がいいと言って家の2階で暮らしたり、
たとえ仮設住宅とかに入れても、今までの近所のまま住めるわけじゃなかったりで、
被災地のコミュニティは完全にバラバラになってしまった。

家族がいればまだ良いけど、独り暮らしの年配の人たちとかも多くて、
被災者が鬱になる場合が多いらしい。

そういう状況で、藤田さん達が草の根的な活動として、
例えば独り暮らしの家の近くのがれきを掃除したり側溝の泥を取り除いたりすると、
その家の人は本当に感謝してくれて、場合によっては家から出てきて、
涙を流してくれることもある、と言っていた。

溝掃除によって自殺を防ぐ。

震災によって本当に行き詰っていて鬱の人たちにとって、身の回りを綺麗にしてもらうということは生きる希望をもらえるということなんだ、と藤田さんは言っていた。

だから、この活動は自殺をぎりぎりのところで喰い止めているんです、
と力強い声で藤田さんは話していた。

藤田さん自身ももろに被災されていて、それだけにこの行動力には本当に敬服した。


もう一つ別に印象的だったこと。
自分が参加した泥掃除の活動の最後に、藤田さんともう一人別の男の人が記念に2ショットを撮っていた。そのとき藤田さんは、「ぶっ壊れた家を背景にね」と思い切りいい笑顔でつぶやいていた。笑っていいのか分からなかった。

この人はもう突き抜けちゃってるんだな、と感じた。
でないと、自分も本当に厳しい状況の中で、こんなにできないと思う。

1回参加しただけの自分には自殺を喰い止めるなんていう意識は実感わかないし、
実際、活動してても涙流して感謝されるなんてことはなかった。

それでもたぶん活動に参加したことは意義があったはず。
少なくとも、市民の会の方々には感謝されていたはず。。


最後にメモ。
くるりの岸田さんも東北を訪れたみたいで、
10月11日の日記(リンク)にはその記録が結構詳細に記されてる。
このとき石巻復興節は生まれたんかな。

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